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福島の夏限定講座で、伝統的"手しごと"を体験。

2015.04.22

Photo&Text: Mayuko Nitta

藍を植え、育てて、染める。

手しごとを通して感じる日本の夏


誰かを思いながら作る幸せ

 私たちが普段身につけている衣服は、もともと山や生き物がたちが与えてくれたもの。

そして、家族や友人、愛するあの人・・・。大切な人のことを思いながら紡ぎ、糸を染め、織るという手しごとは女性の日々の暮らしにある一場面でした。


 福島の素材を使って伝統技術と手作りの喜びを伝えたい。と、2001年「工房おりをり」を立ち上げ、2010年には福島県福島市にある古民家を改修して「染織工房おりをり」をはじめた主宰の鈴木美佐子さん。

  福島は古くから養蚕で栄えた日本有数の絹織物の産地で、蚕の繭から作る真綿や絹織物の伝統は世界でも注目されています。福島の真綿を使い、草木で染め、手で紡ぎ、織る。全ての工程をこの地で完結させることで、技術と伝統を後世に残していきたいと「工房おりをり」の活動をしています。



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夏を感じる手仕事

 「染織工房おりをり」にて、5月から8月まで4回にわたり、夏限定の講座がはじまります。

  大切にしているのは季節を感じる暮らしの体験。今回は、いろいろな「夏のお仕事」と共に、藍を植え、畑の手入れをし、藍をつんで生葉で染めるまでを4回にわけて体験できます。

  藍といえば刈り採った葉を発酵させて染料を作る染め方が一般的ですが、葉が生い茂り新鮮な生葉がある夏だけの「生葉染め」では、美しい水色に染めることができます。

 また、この講座の中で体験する「裂き織りの糸づくり」や「からむしの刈り取り」も、実は夏のお仕事。

 たとえば、「からむし織り」は、夏に材料を収穫して、秋に乾燥させ、畑仕事ができない冬に糸づくりや織りの仕事をする・・・というように、本来は1年かけて一つのものを作りあげていきます。今では季節を問わず、何でも簡単に手に入ります。でも、もともと日本には季節ごとにその季節に合わせた仕事があり、ひとつのものができるまでにとても手間をかけていました。

  みなさんも「工房おりをり」で季節をゆっくりと感じながら、自然のものから自分たちで作り出す喜びを味わってみませんか?都会の喧噪を離れ自然豊かな中での古民家暮らしや温泉でつかれを癒し、新鮮な夏野菜やフルーツとレンガ窯でつくった自家製ナンやピザに舌鼓。ぜひ日本の夏をぜひ堪能してみてくださいね。


「自然からつくりだす衣 夏期講座」

  開 催:全4回(一回だけの参加もOKです)

  場 所:染織工房おりをり(福島県福島市飯坂町中野字瀬沼19)※現地集合

  行き方:飯坂線飯坂温泉駅より福島交通バス杉の平行きに乗車、瀬沼で下車(13分、330円)。目の前が工房。

  定 員:12名



 【第1回・5月】藍を植える 52日(土)、3日(日)


工房の畑に藍の苗を植えます。その他、自然素材を使った古民家生活、初夏の手仕事を楽しむプログラムをご用意。飯坂温泉で疲れを癒し、山の中で家族のようなひと時を。

  内容:自然素材で古民家磨き、飯坂温泉で入浴、藍の苗植え、レンガ窯で自家製ピザ作り

  参加費:14,000円(13食、材料費等込み。学生12,000円)



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【第2回・6月】繭から真綿づくり 613日(土)、14日(日)


藍畑では草をむしり、一年間で最も良質な春蚕(はるこ)から真綿(まわた)を作ります。
「真綿」とは繭の蚕(カイコ)を煮て伸ばしたもの。今回は真綿をつくるための掛け枠から手づくりします。

「真綿」は吸湿性、保温性に優れているだけでなく、絹を構成する18種類のアミノ酸タンパク質は肌に近い構成の為、肌に優しくてあたたかい素材。今回は、参加者の方へお土産の真綿も用意します。

  内容:障子の張り替え、飯坂温泉で入浴、藍畑の草むしり、レンガ窯で自家製ピザ作り、真綿の掛け枠作り、繭から真綿作り

  参加費:14,000円(13食、材料費等込み。学生12,000円)



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【第3回・7月】草むしりと裂き織りの糸づくり&福島産フルーツのサングリアづくり   718日(土)、19日(日)


ぐんぐん成長した藍の畑では雑草をむしって整え、着古した浴衣や古布は裂いて裂き織りの糸作りをします。手作りした福島フルーツのサングリアはお土産に。

  内容:裂き織りの糸作り、藍畑の草むしり飯坂温泉で入浴、浴衣でお茶会、地元野菜のカレーと自家製ナン・福島産フルーツのサングリア作り

  参加費:14,000円(13食、材料費等込み。学生12,000円)



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8月】藍の生葉染めと福島ツアー 87日(金)、8日(土)、9日(日)


朝に収穫した藍の生葉で絹を夏色に染めあげます。山からは「からむし」を刈り取り、皮を剥いだら冬に織るための繊維を取り出して夏仕事の締めくくり。最終日は福島堪能ツアーを予定しています。

  内容:からむしの刈り取り、飯坂温泉で入浴、浴衣で夏の夕餉、藍の生葉染め、地元野菜のカレーと自家製ナン作り、福島堪能ツアー

  参加費:20,000円(2泊、食事、材料費等込み。学生16,000円)


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【お問い合わせ】

工房おりをり   oriwori1215@icloud.com または090-5823-6206(島田)

<工房おりをり主宰 鈴木美佐子>

福島県内の専門学校で和裁・洋裁を専攻、卒業後21歳より山形県米沢市の新田かつ氏に織物を学ぶ。その後、独自に草木染めと織物作品の制作を開始。京都川島テキスタイルスクールに通いながら、講師としての活動を始める。2001年より福島市にて工房おりをりを開設し、織物・紡ぎ・草木染め・羊毛クラフトなどの講習や作品販売を行う。2007年には市内に羊毛フェルトの材料販売・作品専門店「町工房おりをり」をオープン。2010年、古民家を改修した染織工房おりをりを開き、職人育成・技術継承などに幅広く取り組んでいる。「寺子屋おりをり」では、子ども達へ"本物"を通して「ものづくり」を楽しめるようなプログラムを提供。


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スペシャルリポーター 新田真由子

岐阜県生まれ。東日本震災のボランティアで東北を訪れたことを機に、2011年に愛知から東京へ引っ越す。被災地へ通いながら仕事を続けていたが、2015年より福島県へ移住し、原子力災害で避難している地域のコミュニティ事業に関わっている。プライベートでは、写真と言葉でお年寄りの方の思い出をつむぐ「ことのはつむぎという活動をしている。